ギャンブルにおける神経科学と神経心理学

神経科学において、ギャンブルは非常に興味の対象となる行動です。その理由は以下の通りです。まず、ギャンブルはリスクのともなう行動であり、人間的行動であると言えます。このような典型例を見ることで、多くの非合理的と思われる行動の研究に役立てることができるのです。

また、過度に病的なギャンブル行動は中毒症状とされており、この状態が研究の対象となります。薬物など何らかの摂取によらず、中毒症状に陥るメカニズムを紐解く鍵となる可能性があります。

ギャンブルは娯楽産業の一分野で、顧客は価値あるものにお金を賭けます。そのため中毒的な習慣が助長される結果になります。

ギャンブル障害

過去20年にわたり、科学の世界において中毒を専門に扱う有力な学派が、中毒の脳疾患モデルを研究してきました。その研究結果は国によって異なり、多くの批判も受けてきました。

疫学研究の立場からは、薬物乱用に悩む人たちは治療に頼るのではなく、自発的回復を行う必要があります。治療は脳が原因の慢性病には適していません

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薬物中毒では、常習的な摂取が一因となって、独特な神経の変化が見られますが、ギャンブル中毒の場合はこういった問題はありません。

ギャンブル中毒者を扱うギャンブル研究家、精神衛生医、認識神経科学者の多くは、社会心理的な枠組みを採用しています。その枠組みでは、ギャンブル障害は認識と行動のメカニズムに関わる心理的プロセスが原因で継続されると見られています。さらに、社会心理的要素と、個人の生物学的要素も検討対象です。

例えば、利用者の中には、比較的容易に娯楽的ギャンブル障害に発展してしまった例があります

生物行動と神経科学の研究は、新たな光となるのか?

神経科学の実験がギャンブルの研究に光を当てる可能性を3つのアスペクトから見てみましょう。重要な点は、それぞれの生物学的原因の説明が異なるということです。

一つ目の研究分野では、神経科学がギャンブル行動を研究するためのツールとする立場をとっています。そのツールは構造的・機能的な脳画像、ホルモン計測、周辺的心理生理学、脳波記録に関するものです。

二つ目の研究分野は、新しい治療法を検討するものです。ギャンブル障害に関しては、行動的神経科学による発見が、薬品開発に直接役立つ可能性があります。例えば、D3・D4受容体に働く薬品を作る可能性も見えてきそうです。

さらには神経科学の研究は、心理療法がギャンブル障害にどういう効果をもたらすのかを解明し、この分野の発展に役立つと思われます。

最後に忘れてならない第三の研究分野は、ギャンブルの形態に関するものです。近年、世界中にギャンブルの施設が増えています。そこで、ギャンブルの形態によっては、よりリスクが高いのではないかという考えが生まれました。

しかし、この研究には課題が多く複雑です。個々の形態の特徴を個別に研究するのか、現実のギャンブルの状況で起こることに焦点を当てて研究するのか、あるいは重要な中毒性の要素を研究するのかなど、研究テーマの絞り込みも重要になってきます。