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ことばラボ 読みの実験室 第6回

by 2017年4月 1日 10:36 PM

都市の物語の語られ方−−−−奥泉光『東京自叙伝』
 

 ある一人の人物が自分の主観で物語を語ることを一人称の語りといいます。 ある人物とその周囲で起こった出来事について、何ものかが読者に語ることを三人称の語りといいます。 一人称であるか三人称であるかにかかわらず、ある区切りごとに中心となる人物が変わる物語を、群像劇といいます。 それでは、章ごとに語り手が変わり(群像劇)、自らのことを語っていながらも(一人称)、
誰かのことを語っていて(三人称)、だけれども一貫して同じ語り手によって物語が読者に届けられるような小説の形式をなんと呼べるのでしょうか。
*** 奥泉光の『東京自叙伝』はそのように物語られます。 「東京」の「自叙伝」なわけですから、叙述するのは東京という都市自身ということになるのですが、
果たしてこの小説の語り手が東京という都市自身(自体?)なのかはシャクゼンとしません。 自分は東京の地霊であるらしいと自認した何者かが、誰かの口を借りて、「わたし」のことを語りだします。以下のように。 わたしは、わたしであると同時に、今この瞬間に道ですれ違ったこのわたしでもある。私は拡散して、
わたしは東京にいるほとんどである。だから東京というのは私である。 わたしがやったことの責任はわたしにあるけれども、それはわたし以外のわたしがやったことでもあり、
そのわたし以外のわたしがやったことに対してわたしには確かな責任がない。 このわたしは、わたしがやったことに対して総じて無責任です。 わたしのせいでわたし以外の誰かが死にます。 そしてその死ぬ人は他人です。 わたしではありません。 この小説によると、東京に関わるということはそういうことのようです。 ***
この回では、奥泉光の『東京自叙伝』を扱いながら、都市を主題にした本作品がなぜこのような形式をとったかを、これまでの「都市」の語り方(いわゆる都市論)を参照しながら考えていこうと思います。




日時;2014.11.28(金) 19:30〜21:30
料金:1,500円(1Drink)
お問合せ:tomasson.y@gmail.com
場所:ニューロ吉祥寺

奥泉光の『東京自叙伝』を読んできてください。

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逆井 聡人 Akito Sakasai
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程

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「あなたが好きな本」をいくつか思い浮かべてみてください。
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