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ことばラボ 読みの実験室 第9回

by 2017年4月 1日 10:35 PM


第9回は「郊外の探偵」というタイトルのラボを企画しました。
これまでのことばラボでは、「土地と文学」という主題が繰り返しキーワードとなってきました。
今回は、この主題にこれまでとは別のアングルからアプローチし、より具体的な手触り、
土地や時代の臭いを感じとる試みになればと思っています。
扱うテクストは、安部公房『燃えつきた地図』です。
これは1967年の都市と郊外を舞台とした失踪者とそれを追う探偵の物語です。
小説のなかで、土地や場所は「S駅」や「F町」といったかたちで固有名をもたない場所、どこかにありそうでどこにもない場所として描かれます。
そういった匿名的な場所に、試みに、固有の地名と同時代の歴史をあてがってみるとしたら、どんなイメージが得られるでしょうか。
今回のレクでは、フィクションである小説のなかに具体的な土地と場所の記憶を探る実験を試みてみたいと思います。
それは、小説に登場する失踪者たちが見ていたかもしれない光景をありありと思い描くこと、
彼らの息づかいと不確かな歩調に身を委ねることでもあるでしょう。
自ら失踪者となるリスクを冒しながら... その際、「郊外」というやや硬質で捉えにくいものを「団地」という住居形態のイメージのもとで考えてみたいと思います。

また場所と場所をつなぐ(あるいは場所から逃避する)移動のあり方とその動線にも目を凝らす必要があるでしょう。
地下鉄、タクシー、高速道路、ターミナル駅の雑踏、ガス屋が描く郊外の地図。
時間が許せば、郊外や団地を舞台とした他の作品(後藤明生や古井由吉の作品など)と突き合わせ、
都市--郊外と小説のただならぬ関係についても接近してみたいと考えています。
参加者のみなさんと、土地と場所を主人公として小説を読み、語らう機会になればと期待しております。
(担当:唐橋聡)  
*****    日時:2015. 2. 24(火)19:30〜21:30  料金:¥1,500(1drink)  お問合せ:tomasson.y@gmail.com  場所:ニューロ吉祥寺  テクスト:安部公房『燃えつきた地図』(新潮文庫) ※ 参加される方は、『燃えつきた地図』を読んで来て下さい。ただ、新潮文庫版で400ページ近くあるので、途中まででもかまいません。また、この小説は短編小説「カーブの向う」が原型となっています。この短編は『燃えつきた地図』の末尾に多少の修正を加えられて組み込まれています。『全作品』版で20ページほどなので、時間の無い方はこの短編を読んで参加していただいても結構です。「カーブの向う」は、『カーブの向う・ユープケッチャ』(新潮文庫)、『安部公房全作品8』(新潮社)で読めます。  レクは基本的には『燃えつきた地図』に基づいて行いますが、まだ読み切れていない方、「カーブの向う」のみを読んできた方にもお分かりいただける内容を心がけるつもりでおります。

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------------------- ことばラボとは -------------------

「あなたが好きな本」をいくつか思い浮かべてみてください。
そのなかに小説はどれほどありますか。
それらお気に入りの小説たちをあなたが初めて手にとったのはいつで、当時あなたはなにを想い、
それからどれくらい読み返したでしょうか。小説は刻々と変化していきます。
紙に書かれた文字が同じでも、それを読む私たちが変わっていくからです。 

「小説の世界」と一口に言っても、書かれた時代や文化は様々で、さらに読み手の解釈は千差万別。
たったひとつの読みでは完結できないルーズさこそが、小説の豊かさでもあります。 
「あなたの読み」と「私の読み」が出会うとき、小説の世界は今までとはまたちがう表情をのぞかせるはず。

若い文学研究者たちが提案するいくつもの読みのアングルを触媒にして、ともに新しい小説の世界を
試行錯誤してみませんか。 ことばラボはそんな「読みの実験室」です。 

 

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